ISIZE【JAZZ】「連載 天才アケタ流!」 ジャズ界、音楽界、はたまた社会のグランドプライス、アケタがわ賞発表! |
マイルス・ディビスの生き方は失敗だったかもしれない?! トランペットのマイルス・ディビスの自伝氈i宝島社)*をやっとのこと読み終えた。面白かった。何しろ僕は単行本を読む作業が苦手で、温泉本なら任せなさい。マイルスはもっと冷徹かと思ってたが意外と暖かみがあり、うわさとは違いモンクを愛し尊敬してたり、ものすごく正直に語ってた。特に麻薬に関しては正直であんなに暴露しちゃって大丈夫なのかなー?別名・麻薬暴露本と言っても構わない程。話はそれるが人気テナーサックスの片山広明家では片山氏が自宅へ帰宅するとドアのもとで奥方に「タタイマー」と言う。すると奥方は旦那に「あーらあなたコカインナサイ」と答える、のは有名。アブないなー、皆さんこれは内緒にしといてくださいネ!そしてマイルス自伝を読みかけたところでもうやめた。これは根気が切れたんじゃなくてマイルスの音楽の目的が形態の変化にあるということが鮮明に打ち出されはじめたから。彼は演奏用の器、つまり様式が変化してゆくことが“新しい”“発展”の全てだと思ってた、とは断言出来ないがそれに近い。だからインプロバイザーとしての資質、実力も物凄いのにそれを犠牲にした。『サムシンエルス』(ブルーノート)や『ESP』(CBS)、特にESPの即興家としての彼は物凄い!僕は決定的影響を受けそれまでもほぼ全て知っていたので彼がまさかこれだけ吹けるとは思いもよらなかった。これだけの素晴らしい即興演奏術の実力を、演奏形態つまりバンドのサウンドの変化(企画・脚本)に重きを置き過ぎたために犠牲にした、とは言いすぎか?つまり理性の方を大切にした。しかしサウンドの変化だけが新しい、と言うことではなくこれは流行ということもあり、はやりすたれがあり、新しさの一部にしかすぎず、真に新しいものとはその瞬間の即興の最先端の変化にあるかもしれず、例え同じような曲、アドリブをとっても毎日違う面白さもあるわけで、その変化こそ最も新しい、ということかもしれない。つまりマイルス的形態の変化は、それが即興的自己にどれだけイマジネーションを与えるか、というところが大切なのだ。例えばブラームスはどうだろう。彼はマイルスとは反対に過去の形態に戻ることによってロマン派のマンネリを打破、逆に新鮮な即興的自己を得た。重要なのは形態とは発展のためにあるのではなく人間のいろんな表情を出すための手段(様式)、つまりサスペンスはシェーンベルク、ほのかな悲しみはモーツァルト、というように。ジャズでは枠組みの作編曲のすごさと、即興家としてのすごさが同等にあった方がイイ。そこで短い一生だったがアルトのエリック・ドルフィーは形態の変化多様性と即興としての凄さと同居出来た偉大さ!でなければピアノのバド・パウエルの晩年のように形態としての変化は失われても、他者がかなわない程あふれんばかりの心をピアノで伝えられる方が偉大。つまり心が伝えられるということは形態様式的にも前記までのとは違う何かがうまく行っていることなのだ。テナーのコルトレーンもマイルスと同じに形態の変化にこだわりすぎたのが残念。だから晩年のインパルスの物凄いアドリブを聴いても、初期のプレステッジの多くの素晴らしすぎる宝石のようなアドリブ群にはかなわない!僕だったらトレーンのように最晩年フリーしかやっちゃいけないと言われたら逃げ出すネ!ドルフィーなんか音楽家やめちゃうんじゃないか?トレーンがドルフィーにあこがれてたのはその生き方の違いなのだ。また難しい話になってしまった。嫌われるナ!話はころっと変わり、アケタの店8月スケジュール表を見ると「アケタ氏の友人は有名なチェリスト、マー・マー・ヨ※にあこがれてチェロを購入、練習、しかし1ヶ月で断念、今は居間にそのチェロをカザルス!何かよくわかんないネーな…‥。実力はマーマーヨじゃなくてすごいよ!」…‥。困ったもんだ。もうひとつ「名ドラマーでオカリナ制作者の木村勝利さんは今、人気急上昇中のオカリナユニット『木村 均とイースト』に対抗して『木村勝利といい人』を結成!10/8(日)13〜18時、東京は竹橋『科学技術館BFサイエンスホール』アケタ・オカリーナ祭りにて旗上げ公演決定!」ともある。このアケタ・オカリーナ祭り10/8(日)とは別に、9/29〜10/1東京は西荻窪『アケタの店』でもあります。!詳しくはアケタのホームページhttp://www.sns.ne,jp/aketa/を!!みんな来てネ!!また上記10/8には初の全国組織のオカリーナ協会として日本のオカリーナの草分けオカリーナの父・明田川孝(1909〜1958、僕の父)の名を冠した『明田川孝オカリーナ友の会』が発足します!これもホームページを!会費無料で特典もこれから作ります。ぜひ会員になってネ!さて皆様が心待ち(?)してる今月のアケタがわ賞はよくぞ麻薬を暴露、そしてESPの永遠不滅のアドリブ、マイルス・ディビスに5点献上。偉大なエリック・ドルフィーには当然のことながら20点献上。マー・マー・ヨはまぎらわしいことしたので−5点。木村勝利さんは論外の−10点。今回はちょっと長すぎたのでここいらでお開き!ではまた…‥。 〜天才アケタ〜 *「マイルス・ディビス自叙伝氤」は'90.5にJICC出版局(現宝島社)より単行本が '99.12に文庫本がそれぞれ刊行されています。 ※ マー・マー・ヨは高名なチェリスト ヨー・ヨー・マのパロディで実在しています。 〜つづく〜 H12年 8月号 |