JAZZ WORLD「連載 アケタ放騒局」 |
ピアニストを選べなかったスタンウェイの悲劇!? 先日NHK-FMの『セッション』でよくお世話になった菊池安恒氏の事務所に打ち合わせのためお邪魔、久々の再会。今回はジャズではなくてオカリーナのことで話が。昔はセッションによく出して頂いて山田さん、ひらとこ氏、西田実氏…お世話になった。懐かしい!その頃菊池氏は現役のNHKの方だったわけで、今だからこそ話せるのだが僕が出た時の怖いこぼれ話に花 (?)が咲いた。それは昔々ドラムの森山威男が……。キャーッ !!もうかれこれ15年以上も昔、巨匠・森山氏が板橋さん、望月英明(b)氏をひきつれ、片や僕は自己のトリオでと2つのバンドでセッションに出演、最後にジャムとして僕(p)、望月(b)、森山(ds)のトリオで1曲という構成。この頃は朝から夕方の客を入れての本番録りまでかなりの時間NHKのスタジオにいるわけで、途中NHKの食堂で昼飯を食べるのが楽しみだった。しかし真っ先に行くはずの板橋氏がこの日は飯を食べずスタジオでひたすらピアノを練習している、と思いきや鍵盤をゲンコツで上から下まで何往復も長時間叩き続けて、何すんだ大事なスタンウェイに!と思いきや、この日スタンウェイ弾き染めおろしたてなのだ。何て可哀想なスタンウェイ!おろしたては楽器が鳴らないのだ!そこで何とか本番に間に合わせ鳴るようにゲンコツしていたのだ。やはり僕の尊敬する板橋さん。そして本番。僕のトリオ、森山トリオと順調に盛り上がってゆき最後のジャムの1曲、確か僕のオリジナルで「野尻の黄昏〜ポエム・イン・ラブリー」だった。この演奏はテープ録った人多く自分で言うのも何ですが感動的で評判になった。しかしここに凶悪事件!その曲終わったあと鍵盤血だらけになってしまった!!白が真赤!板さんは急いでトイレへ飛んだ!緊急事態発生。そしてぬれタオルを2枚持ってきてその内の1枚を僕に。そして2人はまるで死体を隠すかのように必死で鍵盤をふいた!!その途中板さん「アケタ、血の色が少しでも残ってたら俺達2度と使ってもらえないゾ!それでなくても俺達目つけられてんだから(ピアノ殺し屋 )…」。そしてふき終わった所に菊池さん達が到着。僕達はさも何もなかった顔を装う。しかし先日菊池オフイスでお聞きしたら、そのあと鍵盤から血の跡つまり証拠?が発見され「あいつらこの野郎ただじゃおかない…」となったらしい!しかしそのあと何とか2人共セッションに続けて出して頂きさすがプロの視点と感謝にたえない。あとでテープを聴いたがそんなピアノがこわれる程ではなく(と僕が思ってるだけか?)しかし板橋氏は「おろしたてのピアノは指を切りやすいから注意しろよ!」と僕の弾く前にちゃんと警告してた。板橋氏、菊池氏、さすがプロのジャズ人と思った。この後のセッションで僕は- ピアノとオカルト(オカリナ)と間違って司会され、だが僕はオカルトかも? 〜天才アケタ〜 H13年 5月号
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