JAZZ WORLD「連載 アケタ放騒局」
ジャズピアニスト うなり声伝説、私の美しいうなり!?

先日、彫刻家・舟越保武氏の葬儀に参列。
美術がお好きな方には馴染みの名前。実は僕の父・故・孝はオカリナの開発者であると共に彫刻家で舟越氏や佐藤忠良氏らと共に新制作協会の創立メンバーでまた大の親友。父の作品の多くを新潟県立近代美術館に 入れるためお二人はご助力。舟越さん心からありがとう!
上智大イグナチオ教会のパイプオルガンと賛美歌の唄声には涙がこみ上 げた。同じ唄声でも僕のピアノ演奏中の唄声はどうであろうか?バカ、いっしょにするナ!ハイ良心様。唄声とは正確に言うと‘うなり声’。
今アケタの店ではジャズピアニストのうなり声の分析が盛んで 店マネー ジャー島田氏はそのうち学術論文にまとめるかも。冗談ではなくジャズを語るには重要な学術要素。分析によるとうなり声には大きく二つの 流派がある。一つは規則型といってアドリブと一体となって唄っているというもの。これは一般的で即興がインスピレイトされてくる瞬間は鼻歌ではないが、旋律に合わせ自然と声が出てしまう、というもの。だからジャズ・ピアニストの6割がうなり声を出してしまう。その声も僕のように美声だったら良いが。ガン(ぶつ音)!ハイ良心様。大体はバド・パ ウエルしかりもがき苦しむような苦痛を伴う。いかにアドリブが出て来る瞬間が産みの苦しみか?ということかもしれない。何しろ僕のうなり声は良し悪しは別として歌っている、ということになった。良かった!
歌っているうなり声は尊敬する菊地雅章氏やキース・ジャレットのように裏声または女性声になる人もいる。キースの場合、背中をムチで打た れヒーヒーとうなってその快感をピアノで表現しているようにも聞こえる。うなり声のもう一つの流派は不規則型といって演奏の流れと関係なしに突然“ガオー”とうなるタイプ。ほんとは演奏の流れと一体なのだが見た目には関係なく聞こえ不規則噴火型。この学術例は少ないらしく日 本では名ピアニスト・元岡一英氏がいる(キースはこの二派の中間と僕は思う)。分析した結果、氏は“ガオー”とうなる寸前、鍵盤を見据える 目が燦然と輝くことを発見。つまり鍵盤で弾いている自分のフレーズが何て素晴らしいんだと感激し“ワオー”となるところ“ガオー”となる。そして逆に気に入らないと鍵盤のフレーズを口に吸いとり顔を横にそむけ床へフレー ズを“グエー”と吐き捨てる。嘘のようだがこれは恐らく正解で同じピアニストとしてナルシズムは夢遊病者的にこういうことを させるのだ。何しろ氏のピアノは極上の精神美だ!氏にしろ僕にせよこんな美しい唄をつむぐのにレコーディングでは声帯とれ!とかマイクと口の 間にツイタテ立てられたり、ひどくは酸素用マスクされたこともある。
芸術家を何だと思ってんだ!僕達のうなりこそ自分を賛美する賛美歌!
白鳥の唄!!

〜天才アケタ〜