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「ブルース・フォー・ジョジョ」はアケタが尊敬するジャズ史最高の人、故、高柳昌行(g)に捧げた曲。アケタの店でジョジョ追悼演奏の時に、その場で譜面に収めたもの。メロディアスな即興や作曲は道理から考えればドミソの移動ドが自然と思われるわけで、移動ド逃れに日本人は恰好良さでごまかせるテンション和音を使う場合がある。勿論テンションが自然な歌として生きてる場合はそれはそれで偽物でない。ただ僕の場合、テンション和音ないし減５度のサウンドが一番生きるのはクロマティック的無調の世界で、自然な歌を作るには固定ドの移動ドというべきものがいると思うわけ。ブルースの12小節を守りながらひたすら小節を感じさせず12音階へ音を解き放とうとアケタは模索する。ブルース感覚で真正面からこれぞジャズだとぶつかる岡野との対比は非常に新鮮。板谷のtbもまってましたと火を吹く。
「アルプ」はアケタの父、故、明田川孝の代表的彫刻のひとつ、ジャケットにもなった作品タイトルからとったもの。人間臭さ、ユーモラス、悲しみ、深さ、尊厳……、彫刻のままの曲である。盛り上がりすぎは許されないとの指定があり、ミュージシャン泣かせの曲。クロマティックと３和音のはざまに今までにないバラード世界を創造しようとしており、テンポもインテンポながらひたすらルバートに近づけようともしている。アケタは、今までやった多くの演奏経験の中でもこれが一番完璧だと思っている。その完璧さの中にはダルさやラフさも不可欠。岡野の清々しさがたまらない。ちなみに彼にとって全曲が初見、初演である。楠本の変質的タイミング、こういうタイコは世界広しといえども他にない！
「マジック・アイ」は最近よく使うローランド・シンセによる演奏。アケタ独特の哀愁とクラシックへの傾倒が炸裂する変形マイナー・ブルース。オカリーナやシンセに比べるとここでは生ピアノのほうがよっぽど不自然な楽器に思えてくる。この演奏は非常に長い。長すぎるのではじめは使うのをやめようと思ったが、聴けば聴くほど無駄のない、というよりこの長さでなくてはダメだという、味わいの深いものに思えてきてしまった。みんなの意見も同様、そのまま使うことにしたわけ。これアケタ28歳で結婚したとき、女房に捧げた曲。僕はすぐ人に捧げちゃうので捧げられた人は困ってる。当時古澤良治郎(ds)と共同作業をやってたときの中心になってた曲のひとつで、元々はレゲエ調だった。今回はレゲエとシャッフルの中間くらいで挑戦。何回か聴くうちにやみつきになるハズです。
‥‥‥‥明田川荘之（ライナーノーツより）
エピソード：演奏に使ったシンセは自分で打ち込みができるようになっているもの。この日「マジック・アイ」冒頭のクラシック部分で打ち込んであるはずの音を再生してみたら、何と「猫ふんじゃった」が出てきた。みんな大笑い。その場で急いで打ち直すというハプニングとなってしまった！ 子供と共用のシンセだったから、打ち込み番号１と２はパパ、３と４はふたりの娘と決まってたのに約束をやぶって１に「猫ふんじゃった」、２はバック・ストリングスだったのがピアノ練習曲に。パパ驚いちゃった、という話。
曲目
1.ブルース・フォー・ジョジョ
2.アルプ
3.マジック・アイ
録音
1992年8月14日、10月14日
「アケタの店」「横浜エアジン」にてライヴ収録
演奏者プロフィール
明田川荘之,ocarina：1950年、東京都出身。立教大学卒業。ピアニスト、作編曲家、オカリーナ製作および奏者。
日本オカリーナの父、彫刻家故・明田川孝の長男で、国内外の公演やTV・FM出演、文筆業など幅広い分野で活躍している。父の意志を継ぎ現在オカリーナの研究製作および演奏活動を通じて後進の育成に力を注いでおり、日本オカリーナ界の中心的人物となっている。
自身ジャズ・ミュージシャンであり、オカリーナをジャズに導入するなど、独自の奏法や芸術性で信奉者を多く持っている。60年の伝統を誇る「アケタオカリーナ」、25年の歴史を持つライヴハウス「アケタの店」、ジャズとオカリーナのレーベル「アケタズ・ディスク」などを構え、総じて（株）アケタの代表。アケタは氏の愛称。
リーダー作『わっぺ』（オーマガトキ）
『旅』（AKETA'S DISK） 他
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